富士登山:感想編

富士山に登りました。

今年の大きな目標を一つ消化しました。

なぜ、山に登るのか。

なぜ、富士山なのか。

今のうちに登るしかないと思って、自分で計画を立てました。

同行してくれたのは、無限体力の旦那と、一緒にスカイダイビングをした頼もしい友人と、美人で登山経験者のそのお嫁さん。

バスの中、山小屋の中、下山してから、

その時に思ったことをリアルタイムで書き留めました。

とっ散らかった文章ですが、そのままにして取っておきます。

▼一日目

・自宅(6:30発)から車で富士山の近くへ

・バス(10:00発)に乗り換えて五合目へ

・12:00登山開始

・15:30 7合目の山小屋到着

・17:00 山小屋の夕食

・19:00 寝ようとする

▼二日目

・2:00起床

・3:00 7合目から登山開始

・9:00 山頂着

・15:00 下山完了

●出発〜富士山駐車場

家を出たころはしっかりめに雨が降っていたけれど、富士急の横の富士山駐車場に着く頃には曇りになっていた。

明日の朝9時ごろに大きな雨雲が来そうなのでやや心配。行けるところまで行きたい!

●富士山駐車場〜富士スバルライン〜吉田ルート五合目

富士登山シーズンには五号目までの道路はマイカー規制が行われているため、富士急横の富士山駐車場に車を止めて(¥1000)、バスで五合目まで(往復¥2500)。一回に50人くらい乗れるらしい?もともとの時刻表では毎時30分ごとの発車だったけど、臨時で15分の便もあった。10:00のバスに乗った。

●高地順応

標高の高い場所では身体に負担がかかるため、五合目で1時間ほど時間をとって身体を慣らす必要がある。私の身体は標高差に(も)影響を受けやすい。麓の駐車場の地点で、呼吸が浅くなったり心臓の鼓動がやや速くなったりしていた。

1時間かけて、高地順応を兼ねつつお昼ご飯を食べた。ハヤシライス(1100円)。一階のお手洗いを借りて(レストラン利用者は無料)、登山口へ。

●出発(五合目)〜七合目山小屋

入山料2000円を払い、リストバンドを受け取って(リュックに付けた)、登山開始。

乗馬体験ができるらしい

一日目のお天気は、ほぼ曇り、たまに晴れ間、たまに霧という感じだった。

初めは開けている砂利道からのスタートという感じだった。お天気がコロコロ変わる。雲が抜けたタイミングで、少し下の景色が見えたり、上の景色(といっても迂回している感じなので頂上とかは全然見えない)や空が見えてわくわくした。

始めの道

土や木の根っこや岩という感じの普段の登山らしい道を一区間だけ挟んだあと、残りはずっと砂利道だった。たま〜に岩場もあった。私の心臓はすぐ一生懸命になってしまうので、一区間ごとに呼吸を整える。体力は余裕な感じなのに、さくさく進めないのがちょっとももどかしい。

ジグザグ、当分砂利道

▼ ここ最近で身についてきた高山病対策

・2000mを超えたら、なるべく低い位置で休憩を挟む

・水を一口ずつこまめに飲む(この飲み方ならトイレに行く回数が増えない)

・大きく呼吸するようにする(私は過呼吸にもなりやすいので注意)

・歩幅を小さくする←New! (よっこいしょ!ってしちゃうと酸素をたくさん使ってしまうため)

ジャリ、ジャリ、靴底の音が心地よくて私は終始好きな道だった。たまに晴れ間が出て上の景色が鮮やかに開けたり、雲の隙間から町の景色が見えたりして、視界も楽しかった。私より体重の重い旦那は足がとられてちょっと歩きにくそうにしてた。

しばらく岩場を進むと、今晩の宿に着いた。

一日目の行程の感想は、「なんだ、富士山、つまらなくないじゃん!」。

●七合目山小屋

私の高山病が心配だったため、二日目の行程が長くなったとしても早めに長時間の身体慣らしができたほうがいいと思い、普通より低めの位置と思われる山小屋(七合目トモエ館)を予約した。低いといっても、私が高山病の症状が出たことのある日光白根の標高2578mを超える、2738m。あれよりも高い場所で寝ていると思うと不思議な感じがする。

15時半に着いて、食事の札を受け取る。おそらく二番目のかたまりでの案内となるらしく、17時〜17時半にアナウンスを入れますとのこと。

山小屋は、ロフトのような2段ベッドのような感じの小部屋がこぢんまりとした空間に敷き詰まっているような感じ。4人の個室を予約したので、案内された2段目の空間に小さなハシゴで登って、ふかふかのお布団が4枚、ぎゅうぎゅうに敷き詰められた空間で、着替えたり、汗を拭いたり、お昼寝したりした。パンツとかも全部着替えてさっぱりした。

夕飯はハンバーグカレーだった!友達が買ってくれたあまーいチャイティーがとってもおいしかった。ここの名物らしい。

翌日の朝ごはん用のパンのセットも準備してもらえてて、小ぶりなパンが3種類。苺ジャムも付いていて、なんだかすごく魅力的に見えたので「おいしそう」を連呼していたらスタッフさんが「明日の朝のですよ〜」って教えてくれた。わかってますよ〜。

山小屋横の外で持参した水で歯磨きをして、歯磨き粉を使わなくてさっぱりしなかったから友達からミンティアをもらった。キシリトールガムを持ってきたらよかったなあ。

18時過ぎにお布団に入って、2時間経った現在20時。めぐりズムと耳栓を付けてずっといい子にしていたけれど、寝付けられず、みんなが寝ちゃって不安。2時間横になっているのに心拍数90。

眠れる気配が一向に来なくて泣き出す寸前まできたところで旦那が気づいてくれて、山小屋の外へ連れ出してくれた。山小屋のスタッフさんや利用者の方が4,5人いたけど、もうおやすみの雰囲気だったのでおしるこは諦める。

眠れなくても目をつむっているだけで大丈夫、と、不眠で苦しんでいた頃と同じ言葉をかけてもらって嬉しかった。

部屋に戻ると友人2人も起きていて(起こしてしまっていたらごめんね)、話しかけてくれて嬉しかった。23時くらいからうとうと少し眠れた。

●七合目〜八合目

午前2時起床。御来光を山頂から見るグループは出発済み。山小屋は夕方から夜中まで、いつも誰かしらの物音がしていた。1時間かけてこそこそと支度をしたり夕食時にいただいた朝食のパンを食べたりして、午前3時に登山開始。

苦しい時間が始まる。

真っ暗。初めてヘッドライトを使う。家で試しに着けておけばよかった。細かい雨が降ってる。ネットで見た通り、下からも雨が吹き上げてくる。

七合目から八合目は、岩場が続いていて、標高が高いので一歩一歩が肺や心臓の負担になって重い。仲間にゆっくり歩いてもらう。後ろから来る人たちに必ず抜かされる。

濡れている岩場に足先を差し込んで一歩一歩登る。息苦しくて、朝がまだ来なくて、いつ頭が痛くなるか分からなくて、ギリギリだった。強い風が横から殴りつけてきて、あっというまにパニックになった。下からも人が来るから気をつけて泣く。酸素を吸わなくちゃ。真っ暗な中、急な岩場だけどこの場所で気持ちを落ち着かせるしかなかった。旦那が口にチョコを入れてくれた。

ひらけた場所で旦那に荷物をもってもらって、荷物の重さを気にせず岩場にしがみついて登る。空が少し明るくなってくると、ヘッドライトが不要になって、気持ちも持ち直せた。眩しさに対する過敏も持ち合わせていたから、周りの人たちのヘッドライトが目に突き刺さるようで、真っ暗な時間は本当は早く過ぎ去ってほしかった。

午前4時

8合目に向かっている途中で既に登山計画よりも2時間近く遅れていて、でも高山病を発症するわけにはいかなくて、自分の身体の融通のきかなさ(標高差への耐性がないこと、起立性調節障害で起きたばかりの活動は気持ちが悪くなること、頭が痛くなりやすいこと、強風でパニックになること、視覚や聴覚が過敏気味なこと、深く呼吸ができないこと、手足のリーチが短くて登山に不利なこと、潔癖気味で山小屋の共有部では腹を括る必要があったこと)なんかを一つ一つ他人事のように考えながら一歩一歩登った。上のほうの山小屋を取って日が暮れていく中祈るように登ったであろう友達のことも考えた。

ねぼすけな御来光が、雲を抜けて橙色に顔を出した。綺麗だった。ずいぶん半端な岩場の途中で足元を気にしながら見た。充分だった。

夜が明けた
一歩一歩が重たい

青空も見えて、雲海の景色も美しかった。常に周りがひらけているのは、私にとっては心が躍ることだった。別に曇っていても構わなかった。

途中途中の山小屋でカップヌードル(¥600)や昨日食べられなかったインスタントのおしるこ(¥500)を食べた。山小屋の中は宿泊者以外立ち入りができなくて想定外だったけど、そりゃそうかとも思う。小雨が降っていても、風が吹いていても、外で食べるのはやっぱりサイコーだった。

虹は2回も見れました🌈

●8合目〜山頂

気持ちが落ち着いたころには標高3000mを超えていて、不思議と息苦しさはマシになっていた。マシにはなったけど、少し登っては呼吸を整える。ずっと続くくらい長い行程なのは理解していたから、どこまででも、いつまでも続いていても大丈夫、という気持ちになっていた。

ジグザグの砂利道を歩き続ける。ひと区画登るたびに呼吸を整える。

九合目のあたりには、山頂までトイレがなくてちょっと心配になる。いつの間にかお腹が空く。めちゃくちゃ曇ってる。

先を歩いていた友人たちが、待ってくれていた。山頂らしき鳥居を一緒にくぐろうと言ってくれた。4人でせーのでくぐる。「山頂」の文字を見て、友達がハイタッチしてくれた。

●山頂

辺りは真っ白で風が強かった。スキー場みたいだった。トイレに行って、山小屋に入る。ここだけは中で食べられるらしい。2軒あった。

1200円の月見うどんを頼んだ。あったかくて嬉しかった。普段は卵は白身が結構好きだけど、黄身がすごくおいしく感じられた。

体力に余裕があったので、お鉢巡りもしたかったけれど、数歩歩いてみて、風で吹き飛ばされると思った。山の向こう側はさらに天候が悪い模様。瞬時に撤退の判断ができる友人たちでよかった。

山頂からの景色も真っ白そのものだった。お土産話ができたと思った。またそのうち来たらいい。

●下山

頂上から出発

ゲイターと呼ばれる砂よけの靴カバーを着けて、真っ白の霧の中、ザクザクフカフカの砂利道をかかとを突き刺すようにして滑り下りていく。これが噂の須走ルートか。やたらと元気だった。行きはとてもゆっくりなペースだったから、いつもの感じで走り下りられるのが嬉しかった。

安心したからか、標高差のせいなのか、すぐにトイレに行きたくなって可笑しかった。

ジグザグの砂利道を、下る、折り返す、下る。行動食のおやつをこまめに補給していたから、集中力は切れなかった。まだまだあと3時間あると知ってもへっちゃらだった。

気力も体力も余っているのに、途中でどうしても睡魔がきてしまって、道端で寝た。玄人の人が通りかかったら怒られるかも、と心配しながらも、数分間気持ちよく爆睡した。子どもの頃、西武園ゆうえんちのプールのプールサイドで日に焼けながら熟睡したことを思い出した。

下ってくるにつれて、青空が多くなった。眼下の景色を見て、山梨で暮らしているはずの友人の生活を想像した。

あと2時間、あと1時間、とまだまだ先が長くても、不思議とへっちゃらだった。永遠でも歩いていられそうだった。もっとものすごい距離を歩いて、東京の友人たちを驚かせてみたかった。

人で賑わっていた一日目とは違って、二日目は最初から最後まで静かだった。砂利の音が耳に心地よかった。帰りのルートに売店がなくてややしょんぼりした。

6合目まで下りてくると、行きの時のルートに合流した。私は例によってあんまり覚えていなかった。もう終わってしまうのかと思った。

出発の時に五合目で見かけた馬たちがいた。五合目まで乗せてもらえるらしい。2000円?3000円かな?タクシーくらいかなと予想しながら通り過ぎた。

富士山に登頂した自覚はあんまりなかった。頂上からの眺めが絶景だったらまた違ったのかもしれない。まだまだ先が長すぎることを理解していたから、ゴールは、五合目のゴールだけで、山頂は通過点だった。

いつもの山道みたいな登山道に戻る。一番初めに通った道に戻る。「高いね!」と言っていた場所がそんなに高くなかったことを知る。

15時。「おつかれさまでした」「おつかれさまでした」スタッフさんたちが声をかけてくれて、無事に戻ってきたことを感じる。

登山アプリで「終了」を押すと、タイムは15時間01分。ずいぶんと長い時間がかかった。のぼり1693m。登ったんだ。私のへなちょこの足で。

馬の料金表を見ると、六合目から五合目の乗馬は15000円だった。

●その後

ピカピカのトイレに感動して、ご当地のアイスクリームを食べて、麓の駐車場までのバスに乗った。雷が鳴っていた。登山中にこれをやられたら私は大パニックになっていたかもしれない。

帰りのバスはよく眠った。途中で旦那に間違えて起こされた。

車ですぐの温泉に寄ってさっぱりして、大きな渋滞にも巻き込まれず、帰ってきた。登った実感は明日くらいにわくかもと思った。本当にめずらしく、車の中で寝なかった。家が近づくと、最後の30分は死ぬかと思うくらい眠くなった。旦那も疲れてると思ったから一生懸命目を開けた。これが一泊二日の旅で一番きつかった。

歯だけ磨いて、ワンピースのまま布団に突っ伏して朝まで熟睡した。

「全然大丈夫だったでしょ?」

一日の有給を挟んで、登山が趣味の職場の先輩に最初に言われた一言。

「大丈夫でした!」と返せたことが嬉しかった(読み返してみると、全然大丈夫じゃなさそうなシーンも結構あったけど)。

日本一高い山に登って、なんとなく、今日はすごく苦手な電話に出たり自分でかけたりすることがすんなりとできた。

筋肉痛は、太ももの内側や裏に少しくらい。パワーの出ない身体だけど、登山に使うパーツは育ってきた気がする。

たぶん、これからはとんでもない距離やルートの山に登ることも視野に入ってくるかな。

長い旅の中で、一番おいしかったのは、友人がくれた男梅キャンディーだった。一粒だけなのが、またよかった。

なぜ、山に登るのか。

私は、この目で確かめたいから。

ゆずゆ

登山

Posted by ゆずゆ